音楽というものは、単純に「好きだから歌う」というだけでは成り立たない世界なのだと思います。
もちろん、音楽が好きで、表現したいものがあって、歌を作る。
それは確かにあると思います。
ですが、プロのミュージシャンは、音楽で生活をしています。
つまり、音楽を作るということは、「生きていくための仕事」でもあります。
そう考えると、アーティストは「どういう音楽を作れば売れるのか」ということを、常に考えているのではないかと思います。
どんなメロディーなら人に届くのか。
どんな歌詞なら支持されるのか。
どういう世界観を作れば、自分が求めるファン層に届くのか。
音楽というのは、ただ感情を吐き出すだけではなく、ある意味で非常に設計された表現でもあると思っています。
特に商業音楽では、その傾向は強いのではないでしょうか。
もちろん、そこにはアーティスト本人の思想や価値観も含まれます。
ですが、一方で、その時代の社会背景や文化、世の中の空気感というものも、強く影響していると思います。
つまり、アーティストが「公に歌えること」と、「本当は思っていても、公にはできないこと」が存在しているということです。
これは、レゲエに限った話ではありません。
J-POPでも、ブラックミュージックでも、あらゆる音楽ジャンルに共通していることだと思います。
例えば、その時代ごとの流行や文化が、歌詞に反映されることがあります。
昔のJ-POPに、ポケベルやメールといった言葉が出てくるように、音楽というものは、その時代の空気を映す鏡のような存在でもあります。
特にレゲエやブラックミュージックは、思想や社会性が色濃く反映される文化です。
だからこそ、「どんな言葉を歌に乗せるのか」という部分には、非常に大きな意味が生まれます。
そして、その表現によっては、自分自身の立場や身の安全にまで影響が及ぶ可能性もあります。
特に海外では、ギャング文化やストリート文化、宗教観や地域社会との結びつきが強い国もあります。
そういった場所では、発言や歌詞が単なる表現では済まされない場合もあるのだと思います。
もちろん、日本でも、有名になり、多くの人の前に立つということは、それだけ発信力を持つということです。
そして発信力を持つということは、同時にリスクも抱えるということでもあります。
だからこそ、アーティストというのは、ただ思ったことをそのまま100%歌にしているわけではなく、「何を表に出し、何を表に出さないのか」という部分まで含めて、表現を組み立てているのではないかと思います。
本音だけでは成立しない。
でも、建前だけでも人の心には届かない。
その狭間で、時代や社会と向き合いながら言葉を選び、音楽を作っている。
そこに、音楽という表現の難しさと面白さがあるのだと思います。