みかんの木を育てていると、ただ大きくするだけではなく、「どう育てるか」という視点が少しずつ見えてきます。
枝が伸びる方向、太さ、しなやかさ。
そのひとつひとつに、木の状態や意思のようなものが表れているように感じます。
私が行っている剪定は、できるだけその流れに逆らわず、木の持っている力を活かす方法です。
まず、勢いよく伸びた細くて弱い枝は、そのままにせず、一度切り詰めます。
そのまま伸ばしてしまうと、見た目には広がっても、実を支える力が足りず、枝がしなったり折れたりしてしまうからです。
そこで、無理に伸ばすのではなく、「一度止める」という選択をします。
枝を切ると、そのすぐ近くの脇芽が動き出します。
それまで控えていた芽が、新しく伸びようとするのです。
この脇芽の中から、向きや勢いの良いものを残していくことで、枝は一本ではなく、少しずつ分岐しながら横へと広がっていきます。
こうして、
・ひょろい部分で一度止める
・脇芽を活かして分岐させる
・また伸びたら整える
という流れを繰り返すことで、枝は無理なく、しかし確実に強くなっていきます。
一気に大きくするのではなく、少しずつ。
支えられる範囲で広げていくことが、結果として丈夫な木をつくります。
また、実の付き方についても、木はとても正直です。
もし木の体力に対して実の数が多すぎると、自らその一部を落とします。
これは「生理落果」と呼ばれる自然な現象で、木が自分の状態を見て調整している証です。
つまり、木は常に、「今の自分にとって無理がないか」を判断しながら生きています。
だからこそ、剪定も同じ考え方で行います。
無理に伸ばさない。 無理に残さない。 そして、木の力が活かされる形に整えていく。
そうしてできあがるのは、ただ大きい木ではなく、 実をしっかり支えられる、安定した樹のかたちです。
みかんの木は、切れば応えてくれます。
そして、その応え方を見ながら、また次を考えていく。
剪定は作業ではなく、対話のようなものかもしれません。
少しずつ整えながら、少しずつ育っていく。
そんな時間もまた、みかん作りの楽しさのひとつです。